ENGINEERING

プログラミング思考を養う 非エンジニアのためのコード入門

プログラミング思考(コンピュテーショナル・シンキング)は、エンジニアだけのものではありません。「何を、どの順番で、どうすればいいか」を論理的に考える力は、あらゆる職種・場面で役立つスキルです。本記事では、コードを書かなくても身につけられるプログラミング的思考の鍛え方と、その最初の一歩を解説します。

2026-01-02
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💡 ​この記事でわかること​

  • プログラミング思考とは何か、なぜ今注目されているのか

  • 非エンジニアがプログラミング思考を身につけるメリット

  • コードを書かなくてもできる、日常での鍛え方

  • プログラミングの「はじめの一歩」の踏み出し方

「プログラミングって難しそう」「理系じゃないと無理でしょ?」

そんなふうに思っていませんか?

実は、プログラミングの本質は「コードを書くこと」ではありません。その根っこにあるのは、​物事を順序立てて考え、効率よく目的を達成する力​——いわゆる「プログラミング思考(プログラミング的思考)」です。

この思考法は、2020年から小学校でも必修化されるほど、現代社会を生きるうえで欠かせないスキルとして注目されています。そして何より嬉しいのは、​エンジニアにならなくても、コードが書けなくても、この考え方は身につけられる​ということ。

本記事では、非エンジニアの方に向けて、プログラミング思考の本質と、その鍛え方をわかりやすく解説します。

プログラミング思考とは?

「コードを書く力」ではなく「論理的に組み立てる力」

プログラミング思考(英語では Computational Thinking)とは、文部科学省の定義によれば、

自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力

とされています。

少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに​「目的を達成するために、何を、どの順番で行えばいいかを考える力」​のことです。

論理的思考との違い

「それって論理的思考と同じじゃない?」と思った方、鋭いです。

実は、プログラミング思考と論理的思考には明確な違いがあります。

論理的思考プログラミング思考
特徴筋道を立てて考える筋道を立てて、​かつ効率的に​考える
目的物事を整理・説明する​最適な手順​で目的を達成する
視点「なぜ?」を追求「どうすれば?」を追求

論理的思考は「すべての情報を整理して考える」ことに重きを置きますが、プログラミング思考は「効率的で最適な手順を設計する」ことに焦点を当てます。

つまり、​プログラミング思考は論理的思考をベースにしながら、さらに「効率」と「実行可能性」を加えたもの​と考えるとわかりやすいでしょう。

なぜ非エンジニアにプログラミング思考が必要なのか

1. 仕事の効率が劇的に上がる

日々の仕事には、実は「プログラミング思考」が活かせる場面がたくさんあります。

例えば、イベントの企画を任されたとき。何から手をつければいいかわからず、あれこれ手を出して混乱した経験はありませんか?

プログラミング思考があれば、

  1. ​目的を明確にする​(何を達成したいのか)
  2. ​必要なタスクを分解する​(会場手配、告知、備品準備…)
  3. ​順番を決める​(会場が決まらないと告知できない)
  4. ​依存関係を把握する​(Aが終わらないとBに進めない)

というように、複雑な仕事も整理して進められます。

2. エンジニアとのコミュニケーションがスムーズになる

「こういう機能を作ってほしい」と依頼したのに、思ったものと全然違うものが出てきた——そんな経験はありませんか?

プログラミング思考があれば、​「何を」「どういう条件で」「どう動かしたいのか」​を論理的に整理して伝えられるようになります。これはエンジニアにとって非常にありがたいことで、結果的にプロジェクト全体の進行もスムーズになります。

3. これからの時代、「必須のリテラシー」になる

AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進む現代。テクノロジーを「使う側」として最低限の理解を持っていることは、もはや特別なスキルではなく​基本的なリテラシー​になりつつあります。

小学校でプログラミング教育が必修化されたのも、まさにこの流れを反映しています。今後、デジタルネイティブ世代が社会に出てきたとき、この思考法を持っていないと「会話が通じない」という事態も起こりうるのです。

プログラミング思考を支える「3つの基本構造」

プログラミングには、あらゆるプログラムの土台となる「3つの基本構造」があります。この3つを理解するだけでも、プログラミング思考の核心に触れることができます。

1. 順次実行

​「上から下へ、書いた順番に処理を実行する」​という最も基本的な構造です。

料理で例えるなら、

  1. 野菜を洗う
  2. 野菜を切る
  3. フライパンで炒める
  4. 皿に盛り付ける

という流れ。「野菜を切る」前に「炒める」ことはできません。​順番には意味がある​のです。

2. 条件分岐

​「もし〇〇なら、△△する。そうでなければ、□□する」​という構造です。

例えば、

  • ​もし​雨が降っていたら → 傘を持っていく
  • ​そうでなければ​ → 傘は置いていく

日常でも無意識に行っている判断ですが、これを意識的に整理できるようになると、複雑な意思決定もクリアになります。

3. 繰り返し

​「条件を満たすまで、同じ処理を繰り返す」​という構造です。

例えば、玉ねぎをみじん切りにする場合、

  • 玉ねぎ全体が5mm角になるまで、切る作業を繰り返す

この「繰り返し」の概念は、自動化やバッチ処理の基本でもあります。

コードを書かなくてもできる!日常でプログラミング思考を鍛える方法

方法1:料理をレシピ通りに作ってみる

料理は、プログラミング思考のトレーニングに最適です。

  • ​順次実行​:材料を切る → 炒める → 味付けする
  • ​条件分岐​:肉に火が通ったら(赤い部分がなくなったら)→ 次の工程へ
  • ​繰り返し​:野菜全体に火が通るまで炒め続ける

レシピには「なぜこの順番なのか」という理由があります。それを意識しながら料理することで、プログラミング思考が自然と身につきます。

方法2:仕事のタスクを「分解」してみる

大きな仕事を「これ以上分けられない」というレベルまで細かく分解してみましょう。

例:「提案資料を作る」というタスク

  • ❌ 漠然と「資料作成」と書く
  • ⭕ 「競合調査」「データ収集」「構成案作成」「スライド作成」「上司確認」に分解

分解することで、​どこがボトルネックになりそうか、何から着手すべきか​が見えてきます。

方法3:「もし〜なら」で考える癖をつける

日常の意思決定を、条件分岐で整理してみましょう。

例:「新しいサービスを導入すべきか?」

  • ​もし​月額コスト<削減できる工数の人件費 → 導入する
  • ​もし​セキュリティ基準を満たさない → 導入しない
  • ​もし​既存ツールで代替可能 → 見送る

このように条件を明確にすると、感情に流されない合理的な判断ができるようになります。

プログラミングの「はじめの一歩」を踏み出すには

ここまで読んで「実際にプログラミングも少し触ってみたい」と思った方に、おすすめの入門ステップをご紹介します。

ステップ1:ビジュアルプログラミングから始める

小学校のプログラミング教育でも使われている「​Scratch​(スクラッチ)」は、コードを書かずにブロックを組み合わせてプログラムを作れるツールです。

​直感的な操作​で「順次実行」「条件分岐」「繰り返し」を体感できるので、プログラミングの概念を理解するのに最適です。

ステップ2:無料の学習サイトを活用する

本格的にコードを書いてみたくなったら、以下のような無料サービスがおすすめです。

  • ​Progate​:イラスト付きのスライドでわかりやすく学べる
  • ​ドットインストール​:3分動画でサクサク学習
  • ​Google Colab​:環境構築なしでPythonを試せる

特にProgateは、ゲーム感覚で進められるので挫折しにくいのがポイントです。

ステップ3:「作りたいもの」を決める

プログラミング学習で最も大切なのは、​「何を作りたいか」という目標を持つこと​です。

  • 日々の業務を自動化するスクリプト
  • 自分用の家計簿アプリ
  • 趣味のデータを分析するツール

目的があると、学習のモチベーションが格段に上がります。

まとめ:プログラミング思考は「生き方のOS」になる

プログラミング思考は、特別な才能ではありません。

​「目的を明確にし、必要なステップを分解し、効率的な順番で実行する」​——この考え方は、仕事でも日常生活でも、あらゆる場面で役立つ普遍的なスキルです。

コードを書けなくても大丈夫。まずは今日から、

  • タスクを細かく分解してみる
  • 「もし〜なら」で判断を整理してみる
  • 料理のレシピを「なぜこの順番?」と考えながら作ってみる

こんな小さな習慣から始めてみてください。

プログラミング思考は、まさに​現代を生きるための「思考のOS」​。インストールしておいて、損はありませんよ。

参考情報

  • 文部科学省「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」