「パスワードの使い回し」がなぜ危険なのか?安全なパスワード管理術
パスワードの使い回しは「パスワードリスト攻撃」の格好の標的となり、一つのサービスから情報が漏洩すると芋づる式に被害が広がります。本記事では、NISTの最新ガイドラインに基づいた安全なパスワードの作り方と、パスワードマネージャーを活用した実践的な管理術を解説します。
パスワードの使い回しは「パスワードリスト攻撃」の格好の標的となり、一つのサービスから情報が漏洩すると芋づる式に被害が広がります。本記事では、NISTの最新ガイドラインに基づいた安全なパスワードの作り方と、パスワードマネージャーを活用した実践的な管理術を解説します。
「同じパスワードを使い回しているけど、本当に危険なの?」「複雑なパスワードを覚えきれない…」そんな悩みを抱えていませんか?
実は、パスワードの使い回しはサイバー攻撃者にとって最も狙いやすい弱点の一つです。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)やJPCERT/CCといった公的機関も、繰り返しその危険性を警告しています。
本記事では、パスワードの使い回しがなぜ危険なのかを具体的に解説し、米国国立標準技術研究所(NIST)の最新ガイドラインに基づいた安全なパスワードの作り方と、パスワードマネージャーを活用した実践的な管理術をお伝えします。
読み終えた後には、今日から実践できる具体的なセキュリティ対策が明確になっているはずです。
パスワードを使い回すことの最大のリスクは、パスワードリスト攻撃と呼ばれるサイバー攻撃の格好の標的になることです。
パスワードリスト攻撃とは、攻撃者がどこかのサービスから流出したIDとパスワードのリストを入手し、それを使って他のサービスへの不正ログインを試みる手口です。
たとえば、あなたがサービスAとサービスBで同じパスワードを使っていたとします。もしサービスAで情報漏洩が起きた場合、攻撃者はその情報を使ってサービスBにも簡単にログインできてしまうのです。
一つのアカウントが突破されると、被害は連鎖的に広がります。
このように、たった一つのパスワード漏洩が、あなたのデジタルライフ全体を危険にさらす可能性があるのです。
「自分が使っているサービスは大丈夫」と思っていませんか?
残念ながら、情報漏洩は世界中で日常的に発生しています。大企業であっても例外ではありません。パスワードは漏れるものという前提で対策を考えることが、現代のセキュリティにおける基本姿勢です。
「パスワードは記号や数字を混ぜて複雑に」「定期的に変更すべき」——これらは長年信じられてきた常識でした。
しかし、米国国立標準技術研究所(NIST)は2024年に公開したガイドライン(SP 800-63B)で、これらの常識を明確に否定しました。
NISTの新ガイドラインが示す重要なポイントは以下の通りです。
| 従来の常識 | NISTの新ガイドライン |
|---|---|
| 記号・数字・大文字小文字を必ず含める | 複雑さのルールは不要 |
| 8文字以上あれば十分 | 最低8文字、推奨15文字以上 |
| 定期的にパスワードを変更する | 定期変更は不要(漏洩時のみ変更) |
| 秘密の質問で本人確認 | 秘密の質問は廃止すべき |
複雑さよりも長さが重視される理由は、総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)への耐性にあります。
たとえば、8文字のパスワードと16文字のパスワードでは、解読にかかる時間が天と地ほど違います。記号を無理に入れて覚えにくくするよりも、覚えやすくて長いフレーズを使う方が、セキュリティ的にも実用的にも優れているのです。
定期的なパスワード変更を強制すると、ユーザーは以下のような行動を取りがちです。
結果として、かえってセキュリティが低下することがわかっています。そのため、現在は「漏洩が確認された場合にのみ変更する」という考え方が主流になっています。
NISTが推奨するのは、パスフレーズと呼ばれる手法です。これは、複数の単語を組み合わせて長いパスワードを作る方法です。
良いパスフレーズの例:
coffee-morning-station-blue(28文字)山登り好きな猫と海辺の散歩(日本語も可)このようなパスフレーズは、以下のメリットがあります。
一方、以下のようなパスワードは絶対に避けてください。
123456、password、qwertyなどapple、dragonなどasdfgh、zxcvbnなど「サービスごとに異なる長いパスワードを設定する」——これを人間の記憶力だけで実現するのは、現実的ではありません。
そこで活用したいのがパスワードマネージャーです。パスワードマネージャーを使えば、以下のことが可能になります。
覚える必要があるのは、マスターパスワード1つだけです。
現在、信頼性の高いパスワードマネージャーとして、以下のサービスが広く利用されています。
| サービス名 | 特徴 | 料金目安 |
|---|---|---|
| 1Password | 使いやすさと機能性のバランスが良い定番サービス | 月額約3ドル〜 |
| Bitwarden | オープンソースで透明性が高い。無料プランでも実用的 | 無料〜月額約1ドル |
| Keeper | 企業向け機能が充実。セキュリティ監査にも対応 | 月額約3ドル〜 |
どれを選んでも、パスワードを使い回す現状よりは格段に安全です。
私自身、複数のパスワードマネージャーを試してきましたが、最終的に落ち着いたのは1Passwordです。
実際に数年間使い続けて感じているメリットは以下の通りです。
月額料金はかかりますが、セキュリティと利便性のバランスを考えると十分に価値がある投資だと感じています。無料で始めたい方はBitwardenもおすすめですが、使い勝手の良さを重視するなら1Passwordを強くおすすめします。
パスワードに加えて、二要素認証(2FA)を設定することで、セキュリティはさらに強化されます。
二要素認証とは、パスワードに加えて「本人だけが持っているもの」(スマートフォンなど)で認証を行う仕組みです。
重要なサービス(メール、金融、SNSなど)には、必ず二要素認証を設定しましょう。
最後に、本記事の内容を踏まえて、今日から実践できるアクションをまとめます。
まずは、以下の重要なアカウントのパスワードを見直してください。
Bitwardenなら無料で始められます。まずは一つのサービスで試してみて、徐々に管理するパスワードを増やしていきましょう。
上記の重要アカウントから順番に、二要素認証を設定していきます。認証アプリ(Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticator)のインストールがおすすめです。
パスワードの使い回しは、パスワードリスト攻撃という現実的な脅威にさらされる危険な習慣です。一つの情報漏洩が、あなたのデジタルライフ全体を危険にさらす可能性があります。
NISTの最新ガイドラインが示すように、パスワードは「複雑さ」よりも「長さ」が重要です。そして、サービスごとに異なるパスワードを管理するには、パスワードマネージャーの活用が現実的な解決策となります。
完璧を目指す必要はありません。まずは今日、一つのパスワードを変更することから始めてみてください。
参考情報: